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赤いランドセルと真っ赤な靴
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かつて地下鉄だった場所。そこへのトンネルの入り口があった。しかしその線路の先は途中で落石により崩れていた。
そこは動物たちのねぐらだった。草食動物、肉食動物。彼らは群れと群れを成し、個々で縄張りを守り、生活していた。時には食用のために肉食動物は草食動物を狩った。草食動物は外へ出て草を食べるが、洞窟内の植物も食べる。それは虫なども同様だ。
この路線のある遠方までの経路を塞がれた地下道には、ある程度の食物連鎖が出来ていた。しかしそれをある日、参上した異形が全て豹変させる。
「行軍季節風……」
地下鉄の坑道内へ赤色の風が入ってくる。トンネルの入り口という大きさは充分な隙間風を生み出す。赤色の風は自然界で自然と発生するものではない。
人工的に生成された気象である。
人工的な風が地下鉄の坑道内へ吹き込んだ直後、様々な動物の悲鳴が坑道内で反響する。数十分後、腹当てと陣笠をかぶった雑兵の集団が行列を成して行進してきた。帝国獣の最下級――足軽の軍勢。人型化し、人語で喋っているつもりが唸っているだけという。≪第03帝国≫の軍人たちを再現された者たちだ。
彼らの目前に1身体の帝国獣がいた。顔は日本猿。唯一他とは違うのは人間と同様にきちんと人語を解している。
「帝国自衛隊諸君。本官は帝国自衛隊二尉だ。残念ながら……名前が思い出せん……。しかし……覚えているのは……本官は栄光なる人工知能補助付きサイボーグ人種――Androidであることだ。人工知能で全てをサポートしてもらい、肉体の機能さえも機械化することで彼らと同調するのが人類の最終進化系だというのに人類の有志連合多国籍軍どもはそれを猛反対した。ゆえに滅ぼすべきだ!!!! ここから数十km先に村があった。そこを強襲し、奴らへの見せしめしてやろうぞ!!!」
「ぎゃおおおおおおおお!!!!(帝国万歳!!! 帝国万歳!!! 統合幕僚長閣下万歳!!!)」
「さすがは選民だけはある!!! 本官は嬉しいぞ!!! それでは前線基地の奥へと進み。作戦会議としよう」
帝国自衛隊二尉に扇動されて200体以上の足軽たちは地下鉄の坑道の奥へと戻る。
それから数時間後、この地下トンネルの入り口に1台の戦車輸送車両が停車する。、
武装した1個部隊を輸送する車両から契約軍人たちが次々と下車していく。そして女子高生と契約軍人の少女もだ。
あの後、目的地の都市単位の集落から別の戦車輸送車両に来てもらい、非戦闘員の契約社員のみに乗り換えてもらい、戦闘ができる者だけでここへとやってきたのだ。都市単位の集落は大陸の3分の1範囲ならば、帝国獣の大軍勢を人工衛星のレーダーで補足できるのだ。
「諸君たちすまない!! 本来、戦車輸送車両勤務の契約軍人のみでこの掃討作戦をやらないといけない。しかし先ほどの戦闘で5名以上の当直勤務の者が殉職してしまった。都市単位の本署に要請して……欠員分の補充をしたいとこなんだが……不運にも都市単位周辺の集落で今回と同様の事態が発生した。そのため……移籍予定だった君たちにまで協力を願い出たわけだ」
時間帯指揮官は、移籍予定の契約軍人たちに頭を下げた。
「いや、いいんですよ。正規兵社員になるための経験作りには持ってこいなんでね♪」
総勢87名。殆どが傭兵である。彼らが殉職した場合、生命保険からお金がおりるだけだ。正規兵社員であれば、もっと高額等級の公的保険料がおりたのだろう。
「運転手!!! そして乗員数名は車内で待機だ!!! 万が一、我々が掃討作戦に失敗したら都市単位へ援軍を要請してくれたまえ!!!」
「了解!!」
7名を待機させて80名の戦闘員は坑道内へと入る。
「真っ暗!!! 最悪でありますな……」
「≪戦前≫時代の遺物だよ。都市単位には走っている電車と同じものがここを走っていたんだってさ♪」
この廃墟と化した地下鉄の路線は、遺跡である。野生動物たちの住処になっていたが、現在、人類の宿敵帝国獣の巣窟となっている。
地下鉄の坑道内の内壁には様々な絵柄が記載してある。それらは何かの商品の広告だった。しかし7000年以上経過しているので、原型を留めている絵柄は少ない。
「スマホ!!! JKちゃん!!! 古代のスマホだってさ!!! 凄いよ♪ 凄い♪ 古えにもスマホってあったんだ♪」
「≪複合企業政権≫は、古代基準の家電系統しか再現できないそうでありますな。現行の生産体制を≪戦前≫レベルに拡大しようと思ったら、2個の大陸全域に交通網である車道を建設して安定的な運輸システムも構築しないとでありますな」
「社用地南東大陸と社用地北西大陸、保養所諸島を直結する船のシステムもだよね~~」
この世界は2個の大陸と1個の群島で成り立っている。それらは全て1個の企業における社用地である。
「《帝国最終兵器》《リッチモンド》を探し出して討伐しないとそれは無理でありますな……」
「帝国って腹立つよねーー。身体の半分近くを機械化そして人工知能の補助機能をつけることを強制的に強いることが幸福だと妄信しているからね」
「死んでしまえでありますな……。帝国が滅んでも彼らはまだ諦めないでありますな……」
人類の生活圏とは無縁の生物たちを巻き込んでまで亡国の悪霊どもは妄執に浸っているのだ。
「でもさ……。女子高生の制服を着たままの化石が発見されたときってさ。結構、7000年後の現代を生きる私達にとってはね。希望のニュースだったんだよ♪」
「え? そんなに最高なことでありますか? 吾輩が?」
「JKちゃんは知らないかもしれないけどさ。なんかさ、帝国獣で怯える日常においてさ。勇者様が現れてったって感じかな♪ だって現に強いじゃないのさ♪」
女子高生は押し黙り赤面になる。恥ずかしいのだ。
「褒めてくれてありがとうであります。今回の掃討戦を頑張るでありますよ」
「そうだよ♪ そうだよ♪ その勢いが大切だよ♪ ん? JKちゃん。足元に何か落ちているよ?」
女子高生は立ち止まる。足元にチラシのようなものが落ちている。手にとって見ると、「私の次女が行方不明。年齢は小学生。行方不明になってから3カ月が経過しています。情報を求めます」と記載してあった。写真もチラシに印刷してあった。赤いランドセルを背負い、真っ赤な靴を履いた幼女だった。真っ赤なセミロングで髪飾りでとめている。名前がイニシャルで「JS」と略称されている。正式名称も勿論記載してある。
「≪戦前≫時代に行方不明になったそうでありますな……。可哀そう……」
その時だった。咆哮が奥から聞こえてきた。複数のだ。進軍中の女子高生たちにとってその遠吠えの出どころが何であるかが察知できている。
陣笠をかぶり、腹当てをし、武装した獣人どもが前方より大軍を成して進撃してきたのだ。
「うにゃああああああああ!!!!(有志連合多国籍軍!!! そのお命頂戴いたす!!!)」
足軽どもだ。しかも陣形を組んでいる。
時間帯指揮官は指揮をとる。前衛の契約軍人たちが銃火器で発砲。無数の弾丸が津波のように陣形状態の帝国獣を襲う。しかし奴らは盾を前面に押し出して何とか防ぐ。何体かの帝国獣は被弾し朽ち果てる。
「重装歩兵による密集陣形だ!!! やはり≪戦時中≫当時の練度を再現できているぞ!!! 諸君、防衛態勢をとれ!!!」
前衛の契約軍人たちは盾を持ちだして正面の急激的な進軍を受け止める。シマウマの足軽が数体。キリンの足軽が数体。縦と長槍で攻守一体で刺突攻撃を仕掛けてくる。それらの猛攻に何人かの契約軍人が刺殺されてくずおれる。
「こいつら速すぎる!!!」
「ヒブヒン!!! ひびひぃいいんn!!!(弱小!!! 弱小!!! 小童ども!!!! 帝国の威光の前にひれ伏すがよい!!!)」
帝国獣にとって今は≪戦時中≫の続きである。帝国の最新鋭の科学力によってレーダーによる支援砲撃を無力化し、有視界による歩兵同士の交戦へと文明レベルを退化させたのだ。
中衛にいた女子高生と少女は前衛へ加勢する。少女は鉄球と鎖で繋がれた長柄を振るって正面の足軽の最前部隊へ遠距離攻撃を浴びせる。
「私の生まれ故郷を襲わせてたまるかぁああああ!!!!」
伸縮自在、自由自在。鎖に操られた鉄球は最前部隊各員の急所を狙う。鉄球の打撃で首の骨を折られて最前部隊のシマウマとキリンの足軽は全滅する。
「前は崩れた!!! 攻めるぞ!!!!」
後衛、中衛の契約軍人部隊が後方支援による遠距離攻撃を行う。バズーカ砲、ライフル銃などあらゆる銃火器で帝国獣の群れを磨り減らす。前衛の契約軍人も剣、鉞、槍、刀で斬撃を繰り出していく。
帝国獣の中間部隊もそれらの綿密な連携攻撃を食らい、屠られていく。ついに後衛だけになってしまった。
「うごぉおおお!!!(本陣には行かせん!!! 武功を次々とたてたこの俺様が相手だぁあああ!!!)」
アメリカンバッファローの足軽の巨躯が3体。金棒を振り回して銃弾の雨を跳ね返す。3味1体の金棒の猛打が契約軍人の前衛部隊を易々と撲殺してく。契約軍人の少女は後退して何とかその金棒の連携攻撃から逃れることができた。
「戦友をよくも!!! ここは吾輩がやるであります!!! お願いであります!!!!」
「JKちゃん♪ 息が合うね♪ 合点承知のすけだよん♪」
女子高生は疾駆しながら片手に無線数値入力装置、もう片方に画面のある小型無線受信機を携行し出す。
「インクリメント626。音感反射神経!!!」
番号を入力し、ポケベルへ送信する。受信され、コードが実行される。続けて新たなコードを入力送信する。
「インクリメント5514。文字列翻訳!!! 巨人型有人機の鉄腕」
女子高生の両腕が女子高生の背丈ぐらいはある巨大な機械の腕となった。アメリカンバッファローの足軽の渾身の金棒の打撃が猛襲してきた。しかも3本。しかしそれらを女子高生の巨大なロボットアームが掴みとめる。
「ミノタウルスのつもりでありますかな? マジでアホぅでありますな!!」
巨大ロボットアームの鉄拳が大きい3本の金棒の攻撃を押し返す。同時に1体のアメリカンバッファローの足軽へパンチを叩き込む。胸部が凹み、尚且つ貫通。内臓破裂。もう一方のパンチが頭部を圧し潰す。
「ごんごぉおおおお!!!(お前を嬲さり者にしてくれるぅううう!!!)」
左側面から別のアメリカンバッファローの足軽が金棒で攻撃してきた。そこへ契約軍人の少女が飛び掛かる。
「余所見してんじゃねぇえぞ!!!」
鉄球と鎖で繋がれた長柄の演舞がアメリカンバッファローの足軽の脳天を大きく凹ませる。頭部を圧殺されて突っ伏す。即死だった。
「おごぉおおおお!!!(本陣には行かせん!!)」
最後のアメリカンバッファローの足軽が右側面から金棒を縦横無尽に振るいながら仕掛けてきた。
「半径2メートル以内は簡単に捕捉できると言ったでありますよ」
巨大ロボットアームの硬い掌がアメリカンバッファローの足軽の頭部を鷲掴みにする。一瞬だった。握りつぶすのは。絞られた雑巾のように変形したアメリカンバッファローの足軽は卒倒する。事切れるのは遅くなかった。
こうして帝国獣の先遣隊を全滅させること成功した。しかしこちらもそれ相応に仲間が殉職してしまった。
落盤事故があり、遠方への道が塞がれた線路。線路すらも落盤によって破壊されていた。そこに本陣がいた。落盤箇所で一番大きな岩の上で日本猿の下士侍が佇み、眼下にいる足軽と国歌斉唱していた。
「我が祖国は~~♪ 広大な地球を版図におく神聖なる軍事国家~~♪」
「め~ぎゃ♪ め~~ぎゅあ♪」
「こぎゃん♪ こぎゃ~~ん♪」
帝国自衛隊二尉以外、リズミカルに吠えているしか聞こえない。彼らは≪戦時中≫の真っ最中だと思っている。《帝国最終兵器》《リッチモンド》のデータベースに貯蔵されている≪戦時中≫当時の将兵たちの記憶と人格をあくまで再現しただけだ。戦意高揚のために歌い、次の戦いに備えているのだろう。
国歌斉唱が終わり、談笑を始める。
「ここはな……。本官には少しだけ気になっているんだ……」
「うめぇ? うめんめぇ?(思い出したことでもあるんですか? 上官殿?)」
帝国自衛隊二尉はしゃがみ込んで、自分が座っている大きな岩の表面を撫ぜる。
「そうなんだよ。本官な……任務で……ここにあった駅のホームあたりで爆破工作をしようとしたんだよ……。それでよう……。誰かに目撃されちまったんだ……。不覚だったぜ……」
途切れ、途切れの再現された記憶。その目撃者をどうしたのか覚えていない。そこまでまだ再現されていないのだ。
「親機本部からは、本官と同じ当該部隊がここら周辺で同時並行で作戦中らしい……。一刻も早く村を全滅させるぞ。そして彼らと合流し、都市を襲う。全ては統合幕僚長閣下のためだ。そういえば見張りに行かせた先遣隊からの連絡はないな?」
「それは私達が始末したわ!!」
いきなり人間たちが奇襲を仕掛けてきた。帝国自衛隊二尉は、本陣の足軽を緊急展開させる。応戦態勢は速かった。奇襲戦法で契約軍人の銃火器の銃火砲火の雨が降り始める。本陣前衛のペリカンの足軽たちと蟻の足軽たちが剣や手斧でうまく弾き返す。しかし何体か弾雨の餌食になり朽ち果てる。
「虫の帝国獣て、人間サイズまで巨大化するんでありますな……」
「≪帝国最終兵器≫の恐ろしい兵力調達機能は、虫ですら無尽蔵の公僕へと変形可能だからな……」
契約軍人侵攻部隊と帝国獣の本陣が接敵する。前衛と前衛が入り乱れ、斧や刀、槍、縦などで鍔迫り合い、打ち合いになる。
「こいつら!!! 速度が段違いに違います!!!」
「アリ!! アリ!! アリ!!(我らは地下鉄ターミナル駅爆破工作を専門とする中隊だ!!! 任務完遂のために鍛え方が貴様らとは違うんだ!!)」
足軽の得物に次々と前衛部隊が伸されていく。
「こちとら正規兵社員になる野望があるんだ!!! 固定給があるんだ!!! 入院しても非正規とでは保障が違うんだ!!! そのためにこれまで必死で実績を積んできたんだ!!」
中衛部隊は前衛に加勢し、足軽の最前部隊を蹴散らしていく。
「愚かな烏合の衆の多国籍軍どもよ。兵たちを殺させはせんぞ!!!」
帝国自衛隊二尉は鎖を振り回しながら両方の先端についている鉄球を左右交互に浴びせてくる。鉄球の奔流は前衛部隊、中衛部隊を丸呑みにし、契約軍人の何人かを撲殺していく。
「ヤバイ!!! このままでは我が隊が全滅する!!」
鉄球の襲撃が止むことはない。それが帝国獣の中間部隊、最後方部隊にとって優勢にすべく後方支援攻撃としては充分だった。鉄球の連弾がさらに人間たちの数を激減させていく。
「鉄球勝負ね♪ 私がするわ♪」
鉄球と鎖で繋がれた長柄を振るいながら少女は跳躍する。帝国自衛隊二尉の鉄球の猛打を跳ね返したのだ。
「ほう♪ 小娘♪ 本官と同じ戦い方をするか♪ どうだ♪ 本官らの軍門に下れば、本官の側室として可愛がってやろう♪」
「罪のない生物を悪用して自分たちの肉体にする化け物ども、誰がするもんですか!! さっさっと逝きなさいよ!!」
鉄球を打ち合う。互角だ。少女はなんとか隙を探してこの中隊の司令塔を叩き潰そうとする。頼りになる女子個性はというと、蜘蛛が頭部の足軽と戦っている。蜘蛛の足軽は4本の腕があり、それぞれの手には槍、剣、斧、長剣で武装している。4本の腕を巧みにつかい、女子高生に攻撃を仕掛けている。
「そいつは下士侍への最適化が進んでいる状態の足軽だ!! 気をつけろ!!」
時間帯指揮官の助言に女子高生は注意しながら高周波切断の長剣機能と音声反射神経で受け返している。
「くもん♪ くもん♪ くもん♪(ああ~~♪ なつかしいわ♪ もうすぐで何か思い出せそう♪ 私は帝国のエリート兵だったんじゃないのかしら♪)」
女子高生は防戦一方で少女へと加勢に行けない。
「とてつもなくゴメン!!! そちらに行けないであります!!!」
「いいって♪ 故郷を守るためにここでこの司令塔さえ始末すれば、敵勢の勢いは崩壊するんだから!!!」
「互角と思っているのか? 本官は中隊きっての鉄球使い。帝国自衛隊では上位20名には入る強者よ!!」
帝国自衛隊二尉の鉄球の操り方がより変則的になっていく。それへの対応が遅い少女は、目前に鉄球が迫ってくるのを察知した。鉄球と鎖で繋がれた長柄の柄頭でそれを瞬時に押し返した。
「いけた!!」
「俺の変化球は鎖の反対側にもあるんだよ♪」
帝国自衛隊二尉が持つ鉄球は2個ある。それをついド忘れしていた少女は、頭上から敵の鉄球が急転直下で降り注ぐ。頭部が粉砕されて少女は瞬殺された。
頭部が平たくなった胴体は地面へと突っ伏す。
「そんなぁああああ(# ゚Д゚)!!!!」
つい先ほどまで息がピッタリだった戦友は、敵の騙し討ちによって短い生涯を終えたのだ。都市単位の集落で成功するために生まれ故郷を出たというのに。
憤慨した女子高生は、全速力で跳躍し蜘蛛の足軽を一刀両断する。
「くもぉおおおおお!!!(もうちょっとで本当の階級を思い出せるところだったのにぃいい!!!)」
無線数値入力装置に数字の羅列を打ち込んでもう片方の小型無線受信機に送信する。
「インクリメント773――文字列翻訳――電磁加速原理砲!!」
2本の路線がポケベルより生える。そこへ足元にあった小石をセットして電磁加速で射出する。射線の先は帝国自衛隊二尉だった。帝国自衛隊二尉は2個の鉄球を操り、石ころの砲撃を防ぐ。しかし片方の鉄球は攻撃を防いだが、被弾が強烈だったのか粉々に砕け散った。
「よくも我が愛用を!!!!」
「よくも吾輩の友達を!!!」
女子高生は次々と石ころを再装填し、電磁加速で射続ける。石ころの連射は帝国自衛隊二尉にとっては不利である。最後方部隊に壁役をさせる。セミの足軽、モグラの足軽、シマウマの足軽が身体のどこかに大きな風穴を作り、吐血して息絶える。
「今が好機だ!!! 帝国の亡者どもを一網打尽にするぞ!!!」
生き残った契約軍人たちが急進しながら足軽たちの陣形を崩していく。中間部隊、最後方部隊は瞬く間にバラバラに崩壊し掃討されていく。
「なめるなぁああああ!!! 本官ら地下鉄ターミナル駅爆破工作中隊は必ずこの任務を完遂するのだぁあああ!!!」
帝国自衛隊二尉は残った鉄球を投擲し、連撃で契約軍人の進軍の兵力を削いでいく。
「お前たち血も涙もない帝国の虫けらどもに鉄槌をくれてやるであります!!! 」
地面に落ちていた少女の鉄球と鎖で繋がれた長柄へと、ポケベルを向ける。電磁砲塔機能は少女の武器の鉄球を易々と電磁力で突き飛ばす。少女の忘れ形見の鉄球は大気を貫いてく。砲丸は帝国自衛隊二尉を上半身ごと木っ端微塵に撃砕した。
「ジーク統合幕僚長閣下ぁあああ!!!!」
女子高生は涙を流す。1年前に生まれてから友達や家族と呼べる者はといえば、本社城下町の住民だった。この旅で初めてあった同性の友達だった。話しかけてきたときは、嫌らしい理由だったが、今はそれは関係ない。
少女の遺品である鉄球と鎖で繋がれた長柄は、下半身だけ残った下士侍の死骸ごと、さっきまで帝国自衛隊二尉が佇んでいた、ここら辺りで一番大きな岩に直撃する。その大きな岩は粉々になる。
同時に契約軍人によって地下鉄ターミナル駅爆破工作中隊の記憶を模造された帝国獣たちは殲滅された。
「おい!! 見てみろ!!! 砕け散った岩のところに赤いランドセルと真っ赤な靴の履いた私服姿の骸骨があるぞ!!!」
「え? どうしたんでありますか?」
かつてここで帝国自衛隊二尉のテロを目撃していまい。拉致されて命を奪われた幼女がいた。幼き屍は私服とランドセル、赤い靴を履いたまま突っ伏していた。どうやら大きな岩の下にいたようだ。原型を綺麗にとどめている。頭蓋骨の頭頂部に髪飾りらしきものがあった。そこには「JS」がイニシャルで書かれてある。
「女子小学生JS?」
それは古代史に生きた小学生の化石だった。
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