第二章

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「…………妬くほど、俺の事好き?」 溶けそうな甘い声で耳元で囁くと、一瞬で上気したアキが、ほんの少しだけ小さく頷いた。 瞬間、全身が心臓になったか、と思うくらい、ドクンと激しく鼓動した。 「──っっっ」 気づくと俺は食らいつくみたいにして、アキの唇を貪ってた。 アキはそうされても俺の腕の中から逃げ出すこともなくて。 それどころか、繰り返すキスのたびに、二人してグズグズと蕩けていく。 「……? あれ、ここにあったタオルケットは?」 気づけばアキをベッドに押し倒していて、あまりにがらんとしたベッドにふと気づいて、そう尋ねると、何故か、アキが真っ赤な顔をする。 「……ここに俺のタオルケット、あったよね?」 どうでもいいことなんだけど、何故かアキが真っ赤になるから、もう一度尋ね返したりして。 ……だって、もしかして……。 俺の追及に困ったような顔をして、アキが視線を逸らす。 何も言えないまま、そっとその指先を、上の方に向ける。 「……アキのベッドにあるの?」 そう尋ねると、アキははぁっと切ないため息をついた。 瞬間、俺のタオルケットにくるまって、一人で自分のベッドで寝ているアキが脳裏に浮かんで。 「──っ!!!」 とっさにアキを見つめると、アキは真っ赤になったまま視線を逸らす。 「……あ、あれ、めっちゃ肌触りええから……」 誤魔化すような言葉を必死に言うのが、余計可愛くてかわいくて、おかしくなりそうなくらい、たまらなくて。 唇だけじゃなくて、赤く色づいている瞼にも。小さくてかわいい桜色の耳たぶにも。白くてきれいな喉元にも、いくつもいくつも、キスを落としていた。 そのたびに、アキはかすかな甘い吐息を漏らすから、余計俺は煽られるばっかりで。 気づけば、アキのネクタイを緩めて、襟元のボタンを一つずつ外して、真っ白な肌にいくつも口づけを落とす。 夕日に微かな影を作る鎖骨も、喘ぎと共に密やかに上下する胸も、時折、俺の服をぎゅっと握りしめる指も。 どれも俺の理性を破壊するには十分で。 「アキ……アキっ」 好きだ、とも、愛してるとも言う余裕が無くて、ただ性急にアキの名前しか呼べない。 しなやかな魚みたいにベッドの上で乱れる姿を見て、ただ本能が求めるまま、口づけして、触れて、アキの漏らす吐息に鼓動を速める。 「……け…い……」 俺を呼ぶ艶めかしくて甘い声に、生まれて初めての、全身がドクドクと血脈を打つ感覚に、脳まで支配されて、何も考えることができない。 このおかしくなりそうな、でもたまらない歓喜と快楽の感覚に、初めて本気で好きな人に触れる感覚に、俺はあっという間の溺れて、飲み込まれている。 今ここがどこで、どんな状況かなんて、本気でどうでもいいことにしか思えない。 ゆっくりと、上半身にいくつもキスをして、気づけば、アキの制服のシャツは完全に肌蹴ていた。 だけど、もっと、もっと欲しくて。 ふと、それ以上のことをしていいのかって、瞬間ためらう。 でも、きっと。自分がされたら気持ちいいことは、きっとアキだって気持ちいいはず……。 そう思って、ごくりと唾をのみ込む。 ゆっくりと、ベルトに手を掛けようとした瞬間。 『ぐはぁ。疲れたわ~』 廊下を歩いていく、寮生の声がして、俺は思わず手を止める。 ふっとアキが上気した瞼を開いて、潤んだ瞳で俺を見て、くすっと困ったように笑った。 そのままその手が伸びてきて、俺を引っ張り上げるように抱き寄せると、ぎゅっと抱きつく。 ドクドクするような欲望の感覚が、ふわふわする甘い情感に覆われていく。 いや、根っこでは熱はガンガンと打ち付けているけど。 それでも二人して、二人で鼻をすり合わせるように見つめあって、くすくすと笑う。 なんだかすごく幸せで、 「……今日のところはここまででいいか」 くすって笑った俺の顔を見て、アキが今まで見たことないような、幸せそうな顔をして、そっと俺の唇に自分から唇を寄せる。fd55f819-1ff2-4306-8016-1e6c667e943f 何度もどちらともなくキスをして。 「あのさ、俺、超絶幸せだけど、でも、結構欲求不満なんだけど……」 アキの耳元に唇を寄せる。 「だってアキが欲しくてさ……」 「……別に焦らんとええんちゃう?」 切羽詰まる俺の言葉に、アキはいつもみたいにクールな言い方で、でもきっと俺の腕の中でしか見せない、そんな笑顔をこぼして答える。 「……いつでも慶の傍に、おるんやから……」 そして、聞こえないくらい小さな声でそう囁いた。
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