第一章

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※10pに朔羽ゆき様の素敵な挿絵が入りました。よろしければ、そちらのページも確認していただければ♡ side K 「そうなんだよ、こっち戻ってきてからさ、街歩くと、しょっちゅうガン飛ばされて喧嘩売られて」 困っている話なのに、全然困ってなさそうに陽気にしゃべりながら、鷹塔が機嫌よさそうに食堂の飯を食う。何故か座っているのは俺の向かいだ。 部活上がりから帰る方向が一緒だったせいで、なんとなく帰宅後の夕食の席も、鷹塔が俺の向かいに座っている。 アキがいたら嫌な顔をするのかな、と少し思わないでもないけれど、話してみると、意外と鷹塔の奴は気さくないい奴だった。 「いやさ~、俺、元々目がキツイらしくてさ、視力も最近悪くなったから余計に目つきもめっちゃ悪いみたいで、結構誤解されるんだよな~」 俺は鷹塔の話に頷きながら、食堂の中を見渡す。 「……アキ、まだ帰ってきてないのかな」 小声でポツリとつぶやいたけれど、誰からも返事は帰ってこない。 その瞬間、携帯が震えて、慌ててそれを見ると。 「帰る時間、少し遅くなる」 とだけ書かれたアキからのメールだった。 「アキ、遅くなるってメール来たんだけど」 ちょうどお茶を入れに来た食堂のおばちゃんに告げると、おばちゃんがお茶を入れてくれながら頷いた。 「ああ、2年の藍谷くんね。聞いてるよ。戻りが少し遅くなるから、夕食を取っておいてくれって連絡があったみたい」 そう言われてそう言えば、今日帰りがけに図書館に寄るって言ってたっけ。 アキの事だから、つい集中しているうちに時間が過ぎたのかな、なんてちょっとほっとする。 「……一之瀬、藍谷と仲いいんだな」 ぽつりと、鷹塔が俺に聞いてくる。 「ああ、うん。同室だしね。て、鷹塔って最初逢った時に、思いっきりアキにガン飛ばしてたじゃんか」 うっかり愛想がいいから、うっかりいい奴展開になってたけど、そうだよ、あの時の事を思い出せば、ちょっと納得いかないよね。俺がそう言うと、鷹塔は困ったように頭をぐしゃりと掻き回す。 「悪かったって。あんときはサイコーに腹の居所が悪くてさ。そもそも、転校もだけど、勝手に寮生活は決められてるし、親父には、絶対に学年トップ取れ、それで東大に入れってめちゃくちゃプレッシャー掛けられててさ。でもって彼女とは別れる羽目になるし」 だらしなく頬杖をついたまま、そっぽを向いて呟く。家のしつけが厳しいのか、普段は所作が綺麗だから、わざとやっているんだろうっていうのはわかる。わかりやすく言えばふてくされているって事だろう。 「で、悪いけど勉強なんて、別にやらなくてもできるからさ。余裕だろうって思ったら、妙に出来のいい奴がいるって聞かされて……。俺、本気で努力嫌いなんだよ。勉強なんてしねーで高校生活送りたいの。誰かと比較されんのもまっぴらごめんなの。そのポリシーがいきなり、アイツの存在で予定変更させられそうでさ」 一気に言うとこちらに向き直り首をかしげて尋ねる。 「……そんでもって、藍谷ってホントに頭イイノ?」 ちらりと俺を上目使いにみる視線は、妙に人懐っこくて、本気で嫌いになりにくい。とはいえ、アキに対してとったあの態度は納得しがたいし。 「……今度ちゃんと理由を言って、アキに謝れよ。ああ見えて結構繊細だからな、アイツ」 俺の言葉に、鷹塔はうんうんと愛想良く頷く。 「でもって、アキの成績? まあ、確かに成績はいいよね。ウチの学校始まって以来の点数で入試突破したらしいし。しかも結構真面目にいつも勉強しているからな。……ある意味死角ナシじゃね?」 「ふーん……」 俺の言葉に、鷹塔は眉を寄せて瞳を細め、あんまり面白くなさそうな顔をした。それからふと視線を上げる。
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