第二章

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「……慶?」 帰っているはずの寮の部屋には鍵がかかっている。 訝しく思いながら、俺が鍵を開けると、扉の先には電気一つ付いてない真っ暗な部屋が俺の帰宅を待っていた。 「なあ……慶?」 もしかして寝ちゃっているんだろうか? 慌てて電燈をつけても、部屋には誰もいなくて。 咄嗟にカバンを部屋に投げ込んで、寮母さんのいるスペースに飛び込む。 「あの、慶って今日は……」 俺の言葉に寮母さんはいつも通りの笑顔を浮かべた。 「ああ、慶君、今日は実家に呼び出されたからって、ご自宅に帰られたらしいわよ」 その言葉に俺は思わず黙り込む。慶が実家に帰った? ……それは何かの偶然かもしれないけれど。多分、俺とのことが関係してるかもしれない。その瞬間、頭の中に鷹塔の事が思い浮かぶ。 (あいつやったら、何か知ってるかもしらん……) けど、俺のちっぽけなプライドが、鷹塔に頭を下げさせるのをためらわせた。 ドキドキと嫌な心臓の鼓動が鳴り響く。もしかしたら、慶、本気で怒っているかも。それこそ、謝っても許してもらえないくらいに。 ギュッと心臓が縮こまるような感じがして、ズキリと鈍い痛みを起こす。 「彩くん? そろそろ夕食だから、食堂に行った方がいいわよ?」 促されて、俺は何も考えられなくて、そのまま食堂に向かう。 一瞬向こうからやってきた鷹塔と視線が合うけど、咄嗟に俺はその視線を避けてしまった。 鷹塔が眉をしかめて、首を傾げるようにする。何が言いたげな表情だって思ったけれど、彼の口から何かが発せられることはなかった。 当然俺と鷹塔は離れたところに座り、俺はない食欲のまま、箸で食べ物を掴むけど、何も口に入れることが出来なくて。 深いため息をついて、そのままカウンターに食事のトレーを戻して、誰もいない、静かな部屋に戻って行ったのだった。
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