つかの間の休息

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「ここの花壇、いつ見ても綺麗だね」 ご飯を食べ終えた僕は生徒会室に帰ろうとしたが、久しぶりに会ったのだからと森くんに引き止められ、今は中庭を散策中 うちの学園の園芸部は中庭の他に、東の庭園と西の庭園、各校門前と様々な場所の花壇の世話を任されている。 ちなみに園芸部の顧問は意外なことに龍先生。 なにやら自分から志願したとかしないとか 森くんの担当は中庭。 季節ごとに変わる花をよく紹介してくれる あ、この花かわいい 「この花、なんていう花なの?」 「これは、アマリリスって花だよ」 「アマリリス!初めて見るかも」 「彩翔の初めてもらっちゃった!」 「ちょっとその言い方やめて」 「ごめんごめん」 森くんは時々こうして紛らわしい言い方をする。もう、誰かに勘違いされたらどうするのさ 「アマリリスって、ギリシャ神話から花言葉が付けられたんだよ」 その話はこうだった。 羊飼いの少女のアマリリスは、同じ羊飼いの少年、アルテオに恋をしていました。 一方アルテオは花が好きで、毎日花を届けてくれる女の子のことが好きでした。 その事に気付いたアマリリスは酷く傷ついて、神様に「どうかアルテオが私のことを好きになりますように」と祈りました。 神様はアマリリスの前に現れるとこう言います。 「この矢で自分を傷つけなさい」 1本の矢を受け取ったアマリリスは、神さまの言うとおりに自分を傷つけました。 するとどうでしょう。傷から流れ出た血が地面にポタリと落ちると、そこからは美しい花が咲くではありませんか。 その花をアルテオに贈ると、その花の美しさに心を奪われたアルテオはアマリリスのことを好きになりました。 「なんて美しい花なんだ。アマリリス、僕と結婚してくれ」 その時のアマリリスの笑顔は、花にも負けないとても美しいものでした。 「そこから付けられた花言葉が、『すばらしく美しい』っていうものなんだ。」 「へえ、そんな由来があったんだね。森くんは物知りだなあ。」 そういうと森くんはふふん、と得意気に笑った。 森くんは植物のことを話してる時が1番幸せそうだな 「なんで彩翔笑ってるの?」 「森くんが幸せそうだから」 「・・・それは、彩翔と一緒だからかもしれないね」 嬉しいこと言ってくれるじゃん
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