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「え、おーくん?!」
体が大きいおーくんは、机の下から出てくるのに苦労している様子で、出てきた後も身体中痛そうにさすってた。
その動き一つ一つが全部、おーくんって感じがして、それに少し懐かしさも感じる。
「どうしてここに居るの?」
「そ、れは、、俺、せいと、かい、戻る」
生徒会に戻る・・・?
想像していなかった答えに上手く言葉が出てこない。
「あや、今ま、でしご…やらな、でごめん」
「なんで、いきなり…」
「そ、れは・・・」
「あ、あやが、あい、とら、、で、、俺は、それで、それで、、、」
「焦らなくていい。ゆっくりでいいよ。」
落ち着きが無い様子のおーくんから発せられる言葉は、いつもより聞き取りづらい。
それに、言いたいことを上手く言えないおーくんは少し眉間に皺を寄せていた。
こういう時、朝倉ならちゃんと分かってあげられるのかな…
「ありが、と、あや。えっ、と、それで、」
1度深呼吸をし、落ち着いた様子のおーくんは、少しづつポツポツと話し始めた。
桜輝side
俺は喋ることが苦手だ。
喋ろうとすると、急に頭が真っ白になって上手く言葉が出なくなる。
だから、昔から俺と話す人はみんな聞きにくそうに顔を顰めたり、そもそも話してくれなかったりした。
生徒会のみんなはそんな事しなかったけど、やっぱり他のみんなとは違う自分が嫌いで仕方がなかった。
そんなある時、転校生が来た。
どうやら怜がその子を気に入ったらしく、生徒会のみんなで会ってみることにした。
そこで俺は、一人の男の子と出会った。
「お前の言いたい事分かるぞ!」
愁は口だけじゃなく、本当に俺の言いたいことを理解してくれた。
他のみんなと何の違いも無いように自然に話してくれた。
だから、愁と話すのは気が楽だった。
そうして、嫌いな自分から逃げるために、愁と一緒に居るようになった。
愁と一緒に居るようになってどれくらい経った頃だろうか。あやの親衛隊の隊長が話しかけてきた。
「なんの、用?」
「俺はあなたはまだまともな方だと思ってたんですよね」
あやの親衛隊隊長こと、笹本は俺が一人になるタイミングを見計らって近づいてきたようだった。
「まと、どういう、意味?」
「そのまんまです。もっと周りにも目を向けられる人だと思ってました。でも、それは俺の思い違いだったみたいですね。」
なんだかその言葉に俺はムカついた。
なんでこの人にこんなこと言われなきゃいけないんだ。
俺の事何も知らないくせに
「笹本、どっか行って、います、ぐ」
「はいはい。じゃあ一つだけ。」
それは、俺に対する暴言でも生徒会に戻るように諭す言葉でも無かった。
でもその言葉が、無性に、気に入らない。
「お前らが放っておくなら俺がもらうから。」
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