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『ただいまより、桃林学園新入生歓迎会、開会式を始めます。では初めに校長先生からのお話です。』
今僕たちは、ステージ横の控えにいる。
ステージ上には司会の生徒が一人いて、会は段取り通り滞りなく順調に進んでいる。
今回、司会を担当してくれたのはイベント実行委員会の生徒。本当だったら生徒会の役割だったのに嫌な顔もせずに快く引き受けてくれた。
本当にありがたい。
イベント実行委員会の予算見直そうかな…
「あや、め!」
な、なんで考えてること分かったのおーくん。
ギクッと肩を揺らした僕に委員長はギロリと不審そうに目を向ける。
ここは笑顔を返して誤魔化しておこう。
出番を待つ間、どうにも時計のチクタクという針の音が頭に響く。
それは、控えがあまりにも静かだからか。それとも・・・
・・・。
落ち着かない。
だって今日は がんばれって言ってくれるみんなが居ない。
僕は去年から生徒会にいるけど、こんな状況は初めてだ。いつも全校の前に立ったり大事な仕事をしたりする時は周りに生徒会の仲間が居た。
だから、いつもと違うこの状況に思ってたよりも緊張してるのかもしれない。
「あや?」
「・・・」
「きんちょ、してきた?」
「うん…ちょっとね…」
そう言うと、おーくんは僕のことをぎゅっと優しく抱き締めた。
「大丈夫。おれが、いるよ。」
今朝も怜がこうして抱きしめてくれたことを思い出す。
ここには居ないけど、怜は頑張れって言ってくれてたな。
それにこうしておーくんもそばに居てくれてる。
そう思うと少しだけ緊張がほぐれてきた気がした。
「うん。ありがとう。」
『続いて、生徒会長の話です』
「それじゃあ、行ってくる!」
みんなの笑顔に背中を押されるようにして僕はステージに向かった。
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