新入生歓迎会 当日

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「キャーーー!!!!」 「染井様ー!!!」 「久しぶりの会長、輝いて見えるぜ!」 「うおおおお!好きだあぁぁぁぁ!!!!」 ステージの上に立つと、周りから歓声が上がる。 この反応にはいつまでたっても慣れないな。 ここでいつもなら怜が生徒を静かにさせるんだけど、今日は違う。自分でなんとかしなきゃ。 「みんな、静かにしてください」 「う、うつくしい…!」 「ふへぇ、美声だ!!!」 ん? 「静かに「か、会長様が喋ってらっしゃる!!!」 「おい、こいつ倒れたぞ!保健委員!」 「あのー」 な、なんで静かになってくれないの?! 怜のときは「静かに」の一言で十分なのに。 動揺している俺に、イヤホンから凛くんの声が聞こえてきた。 「彩翔さん、花宮です。今から僕の言う通りに動いてください。」 「え?う、うん。」 「まず、会場をゆっくり見渡して、少し微笑んだあと、」 「しー」 人差し指を口に持っていってしーです。という凛くんの指示に従うと、本当に会場が静かになった。 凛くんすごい! 「凛くん、ありがとう」 「いえ。ですがこの落ち着きも長くはもたないので申し訳ないですが、言葉は短めでお願いします。」 「うん、分かった。」 言葉を短く。たくさん練習してきた言葉を思い出し、その中でも伝えたいことは何かを考える。 「こんにちは。会長の染井です。 今年度の新入生歓迎会は花火大会。例年とは少し違った新歓を、ぜひ楽しんでください!」 削りすぎたのではと不安になるぐらい言葉を短くした僕は、言い終えるとさっさと舞台袖に戻る。 言葉を言い終えたあとも静かだし、やっぱり少し短すぎたかな… と、その直後に今日一番の大声が聞こえてきた。 よ、良かった。あの声量に僕の鼓膜が耐えられる気がしない。 ところで、みんな最初からこんなに騒いで大丈夫かな。 控え室に戻ると苦笑した委員長の横で凛くんが胸を張っていた。 「凛くん。助かったよ、ありがとう」 「いえいえ。いま彩翔さんの美貌を生かさないでどうするんだと思って!」 「? うん、そうだね」 ちょっと言ってることはよく分からなかったけど、ひとまずうまくいってよかった。 「あや、お疲れ様」 「えへ、ありがとう」 「今出てきたばかりの会長さんには申し訳ないけど、すぐに次の準備するよ!」 僕たちに休憩時間なんてない。 最上くんの一言で委員長と僕は急いで別の控え室に移動した。
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