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怜side
2人がステージ袖に戻った後、会場のボルテージは最高潮にまで達した。
あまりにもうるさすぎて耳を塞いでしまったため何を言ってたのかは分からないけど、とにかく会場は凄い盛り上がりだった。
「・・・あ、彩ちゃん、かっこよかったじゃん」
「うん…」
「ほんとにね…」
「「僕たちが居なくても…」」
「・・・」
見栄、ですね
自分たちが居ない行事が想像以上にうまく進んでいってるのが気に入らない、ってところでしょうか。
もはや仕事をサボっていることに罪悪感を感じていない者など居ないが、ここまで突っ張ってきた分下手に後戻りが出来なくなったという感じ。
だから、たとえ彩翔が犬猿の仲の風紀と一緒に仕事をしていようと私たち抜きでも滞りなく仕事をしていようと何も言えない。
桜輝は、この中で誰よりも彩翔を気にしていた。仕事をサボり始めて数日後には、すでに。
時々姿が見えなくなる時があったから、きっと彩翔の様子を見に行っていたのだと思う。
そうして罪悪感に耐えきれなくなった頃、桜輝は戻った。
彼は良くも悪くも口下手で、嘘なんてつけない。
そんな彼だからこそ彩翔に素直に気持ちを伝え、謝罪し、そして許してもらえたのだろう。
だから、
桜輝のように謝罪をすればいい。
私は散々彩翔を傷つけたためもう手遅れだけど、でも皆は違う。
私の態度に流されていただけだ。
皆なら、桜輝のように素直になれれば、きっと彩翔は許してくれる。
そこまで考えて、気付いた。
私はなんて自分勝手で醜いのだろうか…
まるで彩翔の優しさを利用するかのような、謝れば済むという考えをまだ持っていたのか。
謝罪をして、許しを得ようとしているのか。
許しを目的とした謝罪。そこにはもはや純粋な謝罪の気持ちなど無いのでは…
「なあ!みんなも浴衣着るだろ?楽しみだなあ!」
この場の雰囲気とは全く異なるテンションの声
その声に皆ハッとし愁の方を見る。
愁は声は大きいし空気も読めないが悪い子ではない。むしろその素直さ、純粋さに皆惹かれたのだ。
愁は悪くない。
全て自分たちが招いたこと。
分かっているのに。
「俺、彩翔達みたいにみんなとワンポイントお揃いにしたい!」
私たちは、どうしようもない人間だ。
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