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「もしかしたらうちの会社に協力してもらえるかもしれない」
「え?!」
それは、何回目かの打ち合わせの時に突然告げられた。
最上グループは、創業100余年にもなる日本が誇る老舗の着物屋である。新社長に変わってからは会社の方針も少し変わり、最近では誰もが気軽に寄れる店を創ったり出張着付けサービスを始めるなど新事業にも活発に取り組み、さらに人気を集めている。
実は、最上くんはそこの一人息子である。
「最上グループの協力ってことは、もしかして」
「花火大会といえば、浴衣が必要だと思わない?」
ニヤリと笑う最上くんを思わず抱きしめてしまったのは仕方がないことだと思う。
その後すぐに最上グループの協力が決まり、今回の浴衣サプライズに繋がった。
ちなみにお金は今回は理事長が支払ってくれるらしい。
おかげで他にかけるお金を削らずにすんだので助かった。
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「すごい盛り上がりでしたね」
僕たちが舞台袖に戻ってすぐ地面が揺れたと錯覚するほどの大声が聞こえ、未だその歓声は鳴りやまない。
「最上グループの浴衣ってみんなの憧れだからね」
そう言うと何故かみんなして白けた目を向けてきたけど、え、何?
「まあとりあえず、1番の山は越えたわけだし一息つこう」
委員長の声かけで凛くんは素早く給湯室に向かった。
なんというか、言い方は悪いけど風紀委員ってみんなしっかり委員長に教育されてるんだよなあ。
「あや、こっち」
既にソファに座っていたおーくんに呼ばれ、そっちに向かう。
その途中、誰かに腕を掴まれた。
「ん?」
「お前はこっちだ」
そう言われると同時に引っ張られ座った場所は委員長の膝の上。
いやどういう状況?!
「ちょっと、どうい、うつもり、?」
「どういうって、だって俺たち付き合ってるだろ?」
「は?!」
驚いて委員長の顔を見上げると思ってたより近くに顔があった。
その事にさらに驚いて目を見開く僕を見て委員長は意地悪く笑った。
「俺の恋人はどうやら俺に見惚れてるようだな」
「っ・・・!」
か、顔が熱い。
間違いなく今僕の顔は真っ赤。
「こいびと、ちが、あやこっち」
結局おーくんに連れて行かれるまで僕は固まったままだった。
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