狩人は少しずつ愛を知っていく

俺の名前は。

「お前がノエルか？俺はシエル。これから一緒に暮らす事になった。今までの生活とはかなり様変わりする。どんな事があっても、自分で生き抜く力をつける必要がある。くれぐれも死ぬなよ。」

今、目の前にいるこの男が放った言葉を、すぐに理解する事なんか出来なかった。

ただ、この男が名乗った名前「シエル」と俺の名前「ノエル」が一文字しか違わない事から、もしかしたらこの男は本当の父親なのではないか？という淡い期待を抱いてしまった事は間違いない。

だがすぐに、目の前のシエルと名乗った男の容姿と自分の容姿がまったく共通点がない事に気がつくと、そんな淡い期待も空気が抜けた風船の様に萎んでいってしまう。

落胆し、顔を地面に向けてしまう俺を他所にシエルはクルリと背中を向ける。

「わかったらさっさと支度しな。」

そう言い残すとすぐにでも歩き出して行こうとするのに、俺は我に帰って引き留める。

「ま、待って！すぐに支度するから！」

とにかく、この状況から抜け出す為に、この男が差し出した一筋の光明を手放すわけにはいなかった。