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帰り道も会話は弾んだ。病院のすぐそばの交差点で彼女と別れることになった。
「じゃあ、気をつけて」
俺は小さく手をあげて彼女に背を向けた。家に帰る足取りは重かった。
「結さん」
数歩歩いたところで彼女に呼び止められた。俺は少しの期待を込めて振り返る。
「夜は暇ですか?」
鼓動が跳ね上がった気がした。あえてドライに「まぁ」とだけ答えた。
彼女はニコッと笑い「よかった」と言い、そのまま自転車で帰ってしまった。
俺は一人ぽかんとその背中を見送ったあと、再び重たい足を動かした。
真っ暗な家の中に入ると、急に腹が立ってきた。最後の質問はなんだったのだ。俺は食事か何かに誘われるのかと勝手に思ってしまった。
着ていたコートをソファーに放り、そのままベッドに潜り込む。部屋の電気をつけなかったせいかすぐに眠りに落ちた。
何分、何時間たっただろうか。俺はスマホのバイブ音と暗闇を照らす青白い光で目を覚ました。
それが着信ということには気がついたが、目が思うように開かず誰からのものからはわからなかった。
俺は手探りでスマホを手に取り、通話に出た。
「はい」
「あ、お疲れ様です。結さん。今暇ですか?」
声の主が誰かはすぐに気がついた。俺はその瞬目が覚めた。
「浜辺さん? どうかしました?」
「なんだが暇で。よかったら通話しませんか?」
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