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喫煙者になってわかったことだが、タバコは夜に吸った方が美味しい。
いや、味が変わるわけではないのだがなんとなく気分がいいのだ。
家で勉強をするよりも図書館だとかスタバだとかでテキストを開いていた方がその気になるのと同じ理由だと思う。
俺はクローゼットの中から一際分厚いコートとまるで中東の女の人が頭に巻いている布のようなマフラーをとり家を出た。
昼まで降っていた小雨はやみ、濡れたアスファルトが街頭に照らされていた。
俺は小走りで大通りを渡り、誰もいない公園をつっきって小道に入った。
S県の端にあるこの町は人口が少ないせいもあってか夜は本当に人気がない。たまにスケボーをしているヤンキーがいるくらいだ。
照明の壊れかかった古びた自動販売機で缶のココアを買い、陸橋の錆びた階段を下る。
この町に引っ越してきて半年以上になるが、未だに名前の知らない大きな川のテトラポットに腰掛け、缶のプルタブを開けた。
5分ほどしか歩いていないがすでに体は冷えている。その中に流し込む熱いココアは格別だった。
ポケットからライターとタバコを取り出し、火をつける。最近ようやくzippoの取り扱いに慣れてきた。
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