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朝が来るのはあっという間だった。聴き慣れたスマホのアラームに嫌悪感を抱きながら布団を出た。
浴槽に湯を溜め、半身浴気味に浸かる。早い時間に職場に着くのは馬鹿馬鹿しかった。
着替えて歯を磨き少し早歩きで職場へ向かう。着いたのは始業5分前だった。
俺の仕事は病院の介護士だ。人によっては看護補助とか言うが、意味はほぼ同じだと思っている。
今日は朝から最悪だった。朝7時に亡くなった患者さんの家族が遠方ですぐに来られなかったとかで、朝一の9時からエンゼルケアが待っていたのだ。
ガウンを着て看護師と病室に入ると、つい先日までオムツ替えをしていた認知症の老人が真っ白な顔で眠っていた。
名前はすぐには思い出せないが、それなりに仲は良かった。死因は聞かされていないが、別に気になりもしなかった。
俺は黙々と準備に取り掛かった。死んだ人間に無駄に時間をかけるのは非効率だと思う。早く終わらせて他の仕事をしなければ。
病院によって違いはあるだろうが、基本的に死後の処置はエンゼルケアと呼ばれる。体を清拭し、服を着替えさせ死に化粧をする。介護士だけでもできなくはないが、点滴を抜いたりするのは看護師にしかできないので一緒に入った方が効率が良いのだ。
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