オンライン審査会での見えない質問者との５分間

（１１）

　俺は、オンライン上の視線が集まる中でＮ子のチャットを見つけた。

「今、質問しているＤＴ先輩は本物？」
と書いてある。
　俺を写すカメラもオンのままだけど、他の人たちに気づかれないようにＮ子に短い質問を返した。
「どういうこと？」
　Ｎ子は２秒で返信をくれた、既にテキスト入力の途中だったのかもしれない。
「ＤＴ先輩、先月に亡くなったよ」
　Ｎ子のテキストは、打ち間違いか、読み間違いに思えた。
「うそ？」
とだけ返信。

「交通事故」
短い返信が４秒遅れで届いた。

　いったい何が起きているのだろうか。Ｎ子の情報が本当だとすると、今日の時点でウェブ会議室に現れたＤＴは、一体誰だ？

　そうこうするうちにＪＢ准教授が「準備が整ったら速やかに質問を読み上げるように」と丁寧な言葉でプレッシャーをかけてくる。