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学位剥奪の危機を甘んじて受け入れるような俺じゃない。俺はすぐに声をあげて、質問者の人物特定ができるように審査委員会の責任でカメラの作動指示を出すことをJB准教授に要請した。
全学で策定されたウェブ会議およびウェブ講義のルールに則るなら、事前に申請した人物のみが会議及び講義に参加できることになっている。ウェブ会議参加者の人物特定が必要となる状況下では、この審査会の責任者の判断でカメラの作動を指示できるはずだ。
JB准教授は、俺の要請にうなずきながらも、それは責任者であるMP教授の判断になると言った。にもかかわらずMP教授は何も発言せずに腕を組んだまま沈黙している。
数分の沈黙後、MP教授は、カメラの前で立ち上がり、声を荒げて、「早く質問に答えるように」と発言した。JB准教授が、「質問者へのカメラ作動の指示をお願いします」と静かに繰り返したあと、1分間の沈黙があり、MP教授は一方的にウェブ会議システムから退出した。
そして、2秒後にDTも退室した。
JB准教授は、博士審査会の中断を宣言し、手短に他の審査員と視聴者に不手際を謝罪する言葉を残してウェブ会議システムから退出した。
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