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 俺は、ずっとMP教授が苦手だった。でも今日の学位審査を突破すれば、苦手な人間関係からも解放されると考えると嬉しくなる。MP教授のMは苗字の頭文字で、Pは頭髪のない髪型からついた学生たちが使うコード名から。同じフロアに別のM教授もいるので間違えないようにMPとMFのように区別されている(Fはふさふさの意)。    大学院では二人のボス(苦手な教授と恩師の准教授)がいる研究室に所属して5年を過ごした。5年間といっても最初の2年で修士課程を終えて、次の3年間で博士課程の研究をしたことになっている。今日はその成果を発表して審査を受ける日だ。  審査は2段階で、予備審査は小教室を使って非公開で行われた。これが半年前のこと。今日の審査会は、例年と異なりウェブ会議形式のオンライン開催となり、自宅にいる学生も他大学の研究者でも誰でも参加できることになった(MP教授の判断)。
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