結婚は勢いだと言いますが……

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  「千紘さん、千紘さん。  あそこに、いい感じのお店がありますよ?」 と出会ってすぐ、自分の嫁となった、法月真昼(のりづき まひる)―― いや、仙谷真昼はその店を指差し言ってきた。 「あったらなんだ」 と素っ気なく千紘が言うと、 「いやー、ありますよって言っただけですよー」 と言ったあとで、 「でもほら、程よく徒歩ではないですか」 と真昼は笑う。  彼女は常々言っている。  この町には確実に素晴らしいところがひとつあると。 『狭い町なので、何処の呑み屋からも歩いて帰れるところ』  ……だそうだ。  それが一番か。  町の人に殴られるぞ、と思いながら、千紘は言った。 「給料前だから、俺は三千円しか持ってないぞ」
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