1838人が本棚に入れています
本棚に追加
「千紘さん、千紘さん。
あそこに、いい感じのお店がありますよ?」
と出会ってすぐ、自分の嫁となった、法月真昼―― いや、仙谷真昼はその店を指差し言ってきた。
「あったらなんだ」
と素っ気なく千紘が言うと、
「いやー、ありますよって言っただけですよー」
と言ったあとで、
「でもほら、程よく徒歩ではないですか」
と真昼は笑う。
彼女は常々言っている。
この町には確実に素晴らしいところがひとつあると。
『狭い町なので、何処の呑み屋からも歩いて帰れるところ』
……だそうだ。
それが一番か。
町の人に殴られるぞ、と思いながら、千紘は言った。
「給料前だから、俺は三千円しか持ってないぞ」
最初のコメントを投稿しよう!