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「私なんて、二千円しかありません」
と真昼は笑う。
いや、笑うところではない。
お前、それで呑みに行こうと言うのか。
この観光地らしくお洒落げな店に、と千紘は道沿いの小さいが小洒落た建物を見た。
「でも、ほら、千紘さん。
二人で合わせたら、五千円もありますよ」
と真昼は可愛らしく微笑みかけてくる。
「だが、お前の持っている二千円は、給料日までの食費じゃないのか?」
引っ越し貧乏とは、まさにこのこと、という感じで、今、我が家の家計は逼迫しているはずだった。
だが、常に楽天的な真昼は軽く言ってくる。
「あと二日じゃないですか。
なんとかなりますよ。
確か、ほら。
缶詰もあったはずですしー」
ほんっとうに後先考えない奴だ、とは思ったのだが。
この人の良さそうな顔で、にこにこと見上げて来られると、なんだか断れない。
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