一回

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 青春焼けの男性の、名前を知りたい。でも、名前が知りたいなんて言えないし、聞けない。 「野球部の人が、バッティングセンターで練習とか、するんやね」  名前を聞くのは諦めて、素朴な疑問を投げかけた。 「ああ。彼は最近、レギュラー入りをしたんや。野球部の練習がないときでもバットを振っていないと、落ち着かへんのとちゃうか」 「そっかぁ」 「レギュラーに入ったとしても、レギュラーに入って終わりとちゃうから。油断したらすぐに降ろされる」 「大変なんやね」  プロじゃないといえども、趣味や草野球とは違う。会社から給料をもらっている以上、それ相当の活躍をしなければならない。野球好きの日向社長の期待に応えなくてはならないから、好きで野球をやっていても、楽しいだけではできない。最近、レギュラー入りを果たしたという青春焼けの男性を、応援したくなった。  電車で帰る道すがら、スマホで春日園野球部を検索した。バットを振っていたから、ピッチャーやキャッチャーではないのかもしれない。 「あっ」  春日園野球部のホームページから、青春焼けの男性のプロフィールをみつけ、つい声をあげてしまった。まわりの目も気にせず、写真をタップした。  外野手、背番号二十七、佐土原将志(さどわらまさし)、一九九三年七月二十日生まれの二十七歳。七月二十日で二十八歳になるから、私より五歳年下だ。  今度、こっそり野球部の練習を見学に行こうかと思った。たっちゃんにバレたらややこしいことになりそうだけれど、別にやましいことはない。自社の野球部を応援したいと思っただけ。それだけのことなのに、私は何を遠慮しているのか。たっちゃんは、私が知らないと思って、好き勝手しているのに。
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