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「田野さんの後任の、国富ルイさん。野球には全く興味がないみたいやから、みんな、奮起せなあかんで」
日向社長が野球部の方々に私を紹介してくれた。その紹介の仕方は、なんだか野球部の方々に失礼な気がした。申し訳なく思いながら、作り笑いで会釈をした。
「国富さん、彼は田野嘉男くん。レフトで四番」
七緒さんの前に座る男性は、偶然にも七緒さんと同じ名字だった。いや、田野さんって名字は珍しいし、偶然ではないかもしれない。そう思いながら、照れ笑いを浮かべる男性に視線を送った。
「七緒さんの、旦那様ですか」
つい、驚きの声をあげてしまった。大柄でいかついけれど、それでいて表情にはまだ幼さが残る。私より年下か、同年代に見える。
「正解! 旦那様というか、かわいい弟って感じやけど!」
美女と野獣カップルとは、まさにこのふたりのことだと思った。
「こちらの彼は、ピッチャーの南郷康くん。頼れるクローザーや」
「クローザー、ですか?」
日向社長の紹介にピンとこなくて、首をかしげる私。クローザーって、なんだろうか。ピッチャーでもあり、クローザーでもあるのか。選手兼マネージャーみたいなものか。
「抑えの投手です」
南郷さんが苦笑いをしながら教えてくれたが、私はますます混乱した。投手=ピッチャーのことなのはわかるけれど、ピッチャーにも種類があるのかもしれない。クローザーの意味がよくわからないけれど、笑顔で乗り切った。
「彼は、一番でセンターの佐土原将志くん。チームのムードメーカー」
「よろしくお願いします」
私が口を開くより先に、明るく挨拶をすると、また笑顔を見せた。
「こ、こちらこそ」
なんだか妙に照れ臭かった。アルコールのせいではなく、顔が火照っているのを感じていた。
「佐土原くんは最近、レギュラーに定着したんや。足も速いし、守備もうまいから」
佐土原さんは、日向社長のお気に入りなのかもしれない。ご機嫌よく佐土原さんのことを紹介していた。
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