四回

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四回

 梅雨の憂鬱な毎日を、明るくしてくれるようなニュースが舞い込んだ。六月八日に行われた、都市対抗野球大会の代表決定戦。春日園が関西ガスに六対0で勝ち、見事に本大会への出場を決めた。本大会への出場を決めたことはうれしいけれど、私の心はなんだか晴れないままだった。快音で忘れさられたはずの光景が、夢の中でよみがえった。目が覚めたとき、無意識のうち涙が頬を伝っていた。  本気で好きなのか、それともただ単に嘘をつき続けるたっちゃんにイラついているだけなのか。こんな気分にさせられるのなら、別れた方がいいのかもしれない。ちょうど、今週の金曜日に飲みに行く約束をしていた。別れ話をするには、ちょうどいい。受付嬢とどういう関係なのかを問い質して、別れ話にこぎつけたらいい。でも、まだ心の整理がつかない自分も居た。たしかに、たっちゃんは浮気症だ。それを長年、見て見ぬふりをして許していた私にも責任はある。いきなり別れるとかそんな話ではなくて、受付嬢との関係を聞いたうえで、冷静に話し合おう。その延長線上に別れ話が出たら、前向きに考えよう。  別れたら、私はどうなるのか。たっちゃんとの長い日々に変えられる、新たな恋なんてできない気もしていた。  はぁ、とため息をついて、ベッドから起き上がると、カーテンを開いた。外は今日も冷たい雨が、しとしとと降り続いていた。
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