四回

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 モヤモヤした気分で、お昼ごはんも食べずに寝た。おやつどきには、お母さんが淹れてくれたカフェオレを飲みながら、ふたりでケーキを食べた。そのままダラダラと、プロ野球のデーゲームをテレビ観戦したら、あっと言う間にもう夕方。土曜日のほとんどを、無駄に過ごした。なんか、スカッとしたい。 「いってきます」  晩ごはんにお茶漬けをサラッと流し込むようにして食べると、デニムとTシャツ、上にパーカーを羽織って、家を飛び出した。スカッとしたいなら、ここしかない。思い立ったが吉日、勢いでバッティングセンターにやってきた。プリペイドカードを買って、思う存分、スカッとしてやる。鼻息荒くしてきたものの、どのバッターボックスに入ればいいのやら。お子様用が七十キロ。でも、お子様じゃない。たっちゃんと一緒に来たときは、九十キロくらいだった。  バッターボックスに入ることができないまま、ひとり、ウロウロとしていた。 「国富さん」  その声にハッとして振り返ると、佐土原さんが目を丸くしていた。 「へへっ、こんばんは」  一度じゃなくて、二度も会うだなんて。しかも、バッティングセンターで。 それにはもう、照れ笑いを浮かべるしかなかった。 「こんばんは。バッティングセンターで会うやなんて、びっくりしました」  日向社長から『野球に興味がない』って紹介されていた私が、バッティングセンターにいるだなんて。佐土原さんが驚くのも無理はなかった。 「なんか、スカッとしたかったんで。佐土原さんは?」 「今日は、午後から練習で。帰りにバッティングセンターに立ち寄ったんです」  いつも自主練習を欠かさない、佐土原さんらしい。今日は雨だから、ここでバッティング練習をするようだ。 「あ、練習のじゃまになりますね。私のことはおかまいなく、練習してください」  自分なりに気を遣って言ったのに、なぜか佐土原さんは笑っていた。 「いや。今日は国富さんと、楽しくバッティングしますわ。スカッと、ね」  そう言うと、私に合ったバッターボックスを教えてくれた。 「では、お手並み拝見といきますか?」 「拝見しなくてもいいです!」  ブンブンと手を振ると、バッターボックスに入った。ピッチングマシンに映された、選手の姿を睨みつける。あれは、たっちゃんだ。たっちゃんからホームランを放ってやる。浮気症のたっちゃんと、別れたいような、別れたくないような、中途半端な自分自身をかっとばせ。一球、一球、フルスイング。当たらなくても、くらいつけ。憂鬱なんか吹き飛ばせ。
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