恋がはずんだら、春。

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「これ、逢坂君に」 驚いている逢坂君の胸にそれを押しつける。 「タオルのお礼、受け取って。  それから、ちょっと見ていて欲しい」 「あっ、木野さん…!」 チョコの箱を手にした逢坂君を置いて走り出した。 階段を駆け下り、校門へと向かう。 もう下は向かない。 自分を大事にしたい。 今、逢坂君の方へとバスケットボールみたいに はずんでゆくこの淡い気持ちを 大事に育てたい。 「(いちご)、遅かったじゃん。あれ、チョコは?」 校門に着いた私に何食わぬ顔で 新田君が聞いてきた。 「チョコの代わり、受け取って」 私はにっこり笑って ポケットに入れていた手を出した。
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