1646人が本棚に入れています
本棚に追加
/1000ページ
1.◯と✕の運命
「保健委員は浅倉君と吉村さんです」
中学1年の後期の委員決め。友達と一緒の委員になりたいと心の底から強く願っていたあたしにとって。
今、現実で起きている出来事は想像とは遠くかけ離れたものだった。
月曜日の5時間目。太陽の位置が少しずつ降下してきて、それでも窓からはポカポカと温かな日差しが差し込んでくる。
窓際の前から3番目という比較的心地の良い席にいるあたしは、いつもその日光が気持ち良かった。
「結衣ちゃん。あたし保健委員がやりたいんだ。結衣ちゃんは何がやりたい?」
「んー…。どうしようかな」
あたしの前の席の香子ちゃんが、体は教壇へ向けたまま顔をあたしに向ける。
チラ、と目線を黒板に。先程決まったばかりの学級委員2人が、担任の先生の代わりのこの場を仕切っているのだが。
女の子のほうが白いチョークで黒板にカツカツと軽快な音を鳴らしながら文字を書いていく。
美化委員 放送委員 給食委員 生活委員 保健委員 学習委員
などなど、綺麗な形の字にさすが学級委員に立候補するだけあるなと思った。
「他にやりたい人いなかったら一緒に保健委員やろうよ」
委員会には入らず、前期のように教科係でもやろうとかと考えていれば、香子ちゃんは満面の笑みであたしを見つめる。
最初のコメントを投稿しよう!