プロローグ

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プロローグ

 どの世界に住んでいる人間でも、終わりと始まりは突然やって来る。  突然の別れも、突然の出会いも。  どちらも教えてくれる者は1人もいない。  俺たちは生きることが当たり前だと、いつしか思っていて、大切な人との別れなど、想像すらしていない。  それは俗に、この世界が平和だからだ。  だから、突然たった1人しかいなかった、心の救いだった家族を殺された俺の気持ちは、到底理解してもらえないだろう。  哀れだと思われるだけで、可哀想という言葉を言われるだけで、その言葉に重みは一切ない。  残酷な世界だと、俺は苦笑した。  何十億人といる人類の中の1人が死んだ。  テレビのニュースを観ていても、その程度にしか思わないし、その程度にしか捉えないだろう。それが赤の他人ならば尚更に。  ならばそれが身内なら、知り合いならどうだろうか。取り乱し、叫び散らかし、喚き散らかし、この世界に絶望し、感情の制御が出来ずに、自ら壊れにいくだろう。自ら破滅の道へと進み、勝手に自爆すると思う。  もちろん、俺も勝手に自分自身を追い詰めて、壊していった。俺という人間を一つずつ壊して壊して。最終的にはなかったことにしようとした。  そんな俺は、悲しみや後悔よりも先に、怒りが来た。  怒りに身を任せた。そして全てが終わった後、後悔で押し潰されそうになった。  妹を助けられなかった、自分の非力さを嘆いて。  何故、そんなことになったのか。  俺の身に何が起きたのか。  そしてその先に起きた出来事。  この物語は、それらを記したものである。
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