第一部・突然の始まり

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それから数時間後-「ただいま」と仕事を終えたベンジャミン(シャクティの父親)が頭に雪を積もらせて帰って来た。 「あ、お父さんおかえなさい」とリビングのソファーに座って編み物をしていたシャクティが振り向いた。 「あらやだ。貴方家に入って来る時は外で雪を払って来てからにしてっていつも言ってるじゃないの」 「ん?あぁ、まぁ雪なんだし部屋に入れば溶けるから大丈夫だろ」 「その溶けた雪で家の中がべちゃべちゃになるのが嫌なのよ。誰が掃除すると思ってるの?」 メアリはベンジャミンの事を心から愛しているのは間違いなかったが夫のこういうガサツなところは昔から少し嫌だった。 「全くもう!」とぷんすか怒りながらベンジャミンのジャンパーがら雪が床に落ちないように受け取ってメアリは雪を玄関のドアを開けて外に払い退けた。 「夕食は済ませたのか?」 「まだよ。これから」 「そうか。今晩の夕食は何かな」 「今晩はビーフストロガノフよ。ポーが食べたいって言ったの」 「そうか」頷いてズボンのポケットの中身をテーブルに置きながらベンジャミンは「あいつ帰って来てるのか?」とシャクティに聞いた。
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