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第一部・突然の始まり
1.
「別れよう」
そう言われたのはつい昨日の事だった。
「…どうして?」とシャクティが聞き返すと事細かな詳しい説明はせずただ一言「婚約する事になった」と彼はそう言って背中を向けた。
3年間も付き合った日々がたった一瞬の出来事のように感じた瞬間だった。
……どうして突然そんな事言うの?他に恋人が居たなら何故もっと早く言ってくれなかったの?
「貴方なら大丈夫だと信じてたのに…」
泡となってあっという間に消えて行ってしまった幸せだった思い出をシャワーで流しながら静かに泣いていると「シャクティ、ちょっと良い?」と母のメアリがお風呂場のドアを開けて顔を出した。
「急で悪いんだけど………。…やだ、泣いてたの?」
「なっ泣いてないっ!シャンプーが目に入って痛かっただけ…」
「そう、なら良いんだけど」
「急な話しって?」
「あぁ、ちょっと今からポーを迎えに行って来るから留守番頼みたいのよ」
「良いけど…ポーに何かあったの?」
3つ違いの弟のポーは今大学生で自宅から1時間程離れた隣町でアパートを借りて1人暮らしをしているのだ。
夏休みや冬休みなどの長期休みの時以外あまり自宅に帰って来ないポーが何にもない平日の、それも夜中に帰って来るなんて何があったと言うのだろうか?
シャクティが首を傾げて聞くとメアリは「私も信じれないのよ」とおかしな返答だけしてドアを閉めてしまった。
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