華、りんごマスターへの道!

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 今日は休日で、私の家で部活のミーティングと親睦を深めることになっていた。  ところが、みんなより早くに来た副部長が私のもとに、りんごをどっさり持ってきた。  その数なんと十二個! 「田舎からもらってきたんで、華部長、りんご切りお願いしまぁす!!」 「え、なんで私!!?」  思わず声も上ずる。 「え〜?だって部長、栄養士志望でしょ?卒業して栄養士学校行くなら、りんごくらい、ねえ…」  彼はニッコリ笑って、大袋に入ったりんごを私に手渡してきた。 「栄養、残るようにお願いしますね!大会近いし、みんなに栄養摂ってもらいたいですもんねっ!!」 「…。」 「あ、約束の時間まであと五十分ですね〜。じゃ、よろしくっ!俺は部長の買った漫画、リビングで借りてますから!」  …全く、幼馴染だからって…覚えてなさい…!!  やるのよ、とにかく…!  やれば出来るの!!  山積みのりんごを前に、ひとり精神統一をするため深呼吸。  じっと睨んでりんごを一つ、手に取る。  まずは一個目…  …皮が厚いかな…こっちは薄い…。あ、塩水忘れちゃった、色変わっちゃう…!  二個目…  あ、ピーラーがあった!よぉし、これでっ…!…こんなペースで間に合うかな…  三個目…  皮は良くなったけど、切り方よね…。大丈夫かな、これじゃ大きい?  四個目…  …これ、減ってる??減ってない気がする…そんなわけ無いか。  大丈夫、頑張れば減っていくんだから…!  五、六、七、八……  もうすぐよ…頑張るのよ私…!  私は部長なんだから…!!  手が…手が震えてきたっ…でも、みんなの為…!!  あと…一個…! 「華部長、お疲れ様でした、ありがとうございま〜す!!」  今日来られる部員、全員が集まったミーティング。 「はあっはあっ…なんとか間に合った…あ、お茶忘れた!」 「部長、お手伝いします〜!」  用意が終わり、部員の子と二人、リビングに戻ると、 「あ〜ズルいっ!!私にもくださぁい!!」  もうすでに残り少なだったらしい。  部員ちゃんは持っていた数人分のコップを置くと、すぐにりんごに向かって飛んでいった。  そして…… 「部長、副部長、ごちそうさまでしたっ!」 「えっ…」  もう、一つも残っていない。私の分すらも… 「早くしないと色が変わるからね〜。いやあ、美味かったなぁ!」  呑気に言う副部長。  何も知らない部員たち。  私は副部長の彼を、みんなに気付かれないように、キッ、っと睨みつけた。 「…本当に、覚えてなさいよ…!!」  呟いた私に気付かないのか、副部長は一言。 「あ、華部長、ミーティング後にりんご、また渡しますんで。まだありますよ〜!」   私はがっくりとうなだれた……
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加