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だが、本当に傷ついていたのは母だった。
母には悪質な嫌がらせがおきるようになった。
「死ね。クズ。」
などという酷いメールが送られて、
母の事務所にはクレームが殺到。
嫌がらせは日に日に
エスカレートしていったが、
ある日誹謗中傷の容疑で数名が
警察に逮捕され、
3日後何もなかったかのように収まった。
ニュースでは、コンビニ強盗やあおり運転、
芸能人の不倫騒動などが流れる。
誰もこの出来事を
覚えていないかのようだった。
けれど、プライドを傷つけられた母は
スランプに陥り、小説が書けなくなった。
そして、日に日に衰弱していった。
全て僕のせいだ…。
母は僕には無理して笑顔を見せて、
「翔は悪くないからね。」
と言ってくれてはいたが、
それは返ってお互いの心の傷をえぐった。
母を傷つけてしまった、
それが僕の、一番悲しかったこと。
もっと上手い小説が書ければ…
そうは思ったが、小説はうまく書こうと
思って書けるようなものではなかった。
書きたい事、世の中への希望を失った僕に
書けるようなものではなかったんだ。
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