第1章

12/19

62人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
だが、本当に傷ついていたのは母だった。 母には悪質な嫌がらせがおきるようになった。 「死ね。クズ。」 などという酷いメールが送られて、 母の事務所にはクレームが殺到。 嫌がらせは日に日に エスカレートしていったが、 ある日誹謗中傷の容疑で数名が 警察に逮捕され、 3日後何もなかったかのように収まった。 ニュースでは、コンビニ強盗やあおり運転、 芸能人の不倫騒動などが流れる。 誰もこの出来事を 覚えていないかのようだった。 けれど、プライドを傷つけられた母は スランプに陥り、小説が書けなくなった。 そして、日に日に衰弱していった。 全て僕のせいだ…。 母は僕には無理して笑顔を見せて、 「翔は悪くないからね。」 と言ってくれてはいたが、 それは返ってお互いの心の傷をえぐった。 母を傷つけてしまった、 それが僕の、一番悲しかったこと。 もっと上手い小説が書ければ… そうは思ったが、小説はうまく書こうと 思って書けるようなものではなかった。 書きたい事、世の中への希望を失った僕に 書けるようなものではなかったんだ。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加