第1章

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そしてリュックを背負い、 玄関のドアノブに手を掛ける。 けれど僕は思わず手を止めた。 …ドアの鍵が開いていた。 「え……?」 さっと血の気が引く。 なんでだ…? 兄ちゃんはガサツなところがあるから、 普段家を出る時きまって鍵を 開けっぱなしにして出て行く。 そしてそれを僕が閉めてから家を出るのが、 普段のルーティンだ。 だけど… 今日兄ちゃんは帰ってきていない筈だ。 一体どういう事だ…? 昨日僕は家に帰ってきてから鍵をかけた筈だ。 それから一度も外出していないし、 誰もうちに遊びにきていない。 悪寒がはしり、冷や汗が額を伝う。 右手の手がドアノブから離れない。 足も、接着剤で床に くっつけられてしまったようだ。 呼吸が乱れる。 昨日からこの家の様子がおかしい。 まるで家の中に他の人がいるかのようだ。 兄ちゃんがいないこの家には 今、僕一人しかいない筈なのに…。 大きな深呼吸を一つして、 僕は思いきりドアを開ける。 鍵を閉め、 足早に学校へと向かった。
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