第1章

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学校に向かって歩いていたら、 信号が赤に変わってしまった。 視線の焦点を失い、ぼーっとしながら 思考を巡らす。 一体昨日から何が起きているのだろう。 兄ちゃんは帰ってこないし、 テレビは勝手についているし、 誰もいない筈の家の鍵は開いてるし…。 全く何が起きているのか分からない。 長くて重い溜息がこぼれる。 すると、横断歩道の向こう側に立っている、 中学生くらいの男の子が 突然その場に横たわった。 どうしたんだ? 体調が悪いのだろうか。 大丈夫かな…。 そのまま目を凝らして見ていると、 その子は目を閉じた。 そして段々と透明になっていく。 透けていく。 僕は自分の見ている光景が信じられない。 右手で目を擦ったが、何も変わらない。 その間にも男の子が消えていく。 するとその時、信号が青に変わった。 短い横断歩道をダッシュで渡る。 すぐに男の子の側に駆け寄って 「大丈夫⁉︎聞こえる?」 と叫んだ。 ところが返事がないため、 震える手に力を入れ、 スマホに119と入力しようとポケットから スマホを引き抜いた。 だが、視線を戻した瞬間僕は息を呑んだ。 男の子が完全に僕の目の前から消えていた。
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