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書店を出てから、隣のカフェに入り、
ホットココアを注文する。
ゆっくりココアを飲みながらたった今買った本を読もうと思ったが、待ちきれずに、ココアが届く前にレジ袋から本を取り出す。1ページ目を開いたら、私はもう本の中入っていた。
現実的ではないのにどこかリアリティのあるストーリー。流れもよく分からないし、言葉も所々違和感を覚えるけど、その本は私の心を鷲掴みにして、ずっと離さなかった。時間を忘れて一気に本を読みきったら、
気づけば次の電車も逃してしまっていた。
やっと一口目を飲んだココアは既に冷えていた。
帰らなくちゃ、とは思うけれど、どうしても席を立つ気にはなれなかった。腰が重い。
まだ私は本の世界にいた。
なぜか私の頬に一滴の雫が垂れていること
に気がつく。私、なんで泣いているんだろう。
一体これは実話なのか。
いや、そんな筈ない。きっとただのキャッチコピーに過ぎないのだろう。
…でも、なんでこの作者はこの小説を書いたのだろうか。
私は居ても立っても居られなくなり、この本の出版社に電話し、記者の立場を利用して
作者の霜月翔と
会わせてもらえることになった。
この日、久々に記者になって良かったな、
と私は思っていた。
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