第2章

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第2章

青く澄み渡る空と、わたあめみたいな雲が 僕の視界を埋め尽くす。 聞こえるのは、求愛するオス蝉の鳴き声だけ。 なのにその世界は、いつもと違っていた。 ~20分前~ 教室のドアを勢いよく開けて、 その場に崩れ落ちた少女の正体は、 花井莉江(はないりえ)だった。 彼女は学級委員をしていて いつも光の輪の中心にいるような人だ。 ニコニコと笑顔を振りまいているし、 僕は彼女の笑顔以外の表情を 見たことがなかった。 それなのに、彼女は一気にそのイメージを 僕の脳内から消した。 彼女は突然大声をあげて 泣き出したんだ。赤ん坊のように。 「うぅっ…うぅぅっ… よかった、よかったよおぉぉ!」 またもや廊下に声がこだまする。 どうしたんだ⁉︎ 僕は何もできずに、ただウロウロする。 その間も彼女は声をあげながら、 しゃくりあげていた。 とりあえずリュックの中から、 まだ開けていない ペットボトルの水を手渡した。 花井さんは、目を少し丸くした後 それを受け取った。 だがすぐに表情が崩れる。 「あ、あいがとおぉぉ…」 ・・・。 「…何でそんなに泣くの?」 すると彼女は右手側の袖で 涙を拭って、深呼吸をした。 ペットボトルの水を飲み干して、一息つく。 そして、へへっと笑った。 「ねぇ、一緒についてきてくれない?」 「…どこに行くの?」 すると彼女はいたずらっ子のように笑って、 教室を出て歩いていった。 おいおい、強引だな…。
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