第2章

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連れてこられたのは公園だった。 丸太でできたベンチが一つ、大樹の下に ポツンとあった。 けれど、青々とした芝生が一面に茂っていて 寂しくは感じられなかった。 「ほら東雲君、こっちおいで〜」 と、芝生の上に呼ばれた。 彼女は芝生の上で、ねっ転がりながら 空を仰いでいる。 正直なんだか気持ちが良さそうだ。 僕も加わりたくなってしまい、 ついつい彼女の横に行き、仰向けになった。 彼女は少し嬉しそうに微笑んでいた。 視界に入ってきたのは、空。 ただただ、青空。 他は何も見えない。 でも、何だろうこの気持ち。 自然と笑顔になってしまいそうだ。 さっきまで不安と恐ろしさで 潰されそうだったのに…。 すると突然、そよ風が左から吹き抜けた。 それと同時に僕の視界には黒い糸のようなもの が沢山入り込んでくる。 ん? それは僕の顔に あたったり離れたりを繰り返していた。 手で振り払うのに、全く動じない。 僕は起き上がると、すぐに黒い糸のようなものの正体が分かった。 「君さ、髪をまとめてくれないかな? 僕の世界に黒い異物が入ってきたけど?」 「あはは!そーだね!」 そう言うと、彼女は足を空に向かって伸ばし、 助走をつけて起き上がった。 そして、高い位置で髪を一つに束ね始める。
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