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二人とも段々と目線が下がっていく。
蝉の鳴き声しか聞こえない。
「君はどうして…?僕らは関わったことない
じゃないか。」
「うん…うん、そうだよね。説明する。」
そう言って彼女はぽつぽつと言葉を拾い上げる
ように話し始めた。
「私は、幼稚園生の頃家族を事故でなくした。
酔っ払ったおっさんの車にぶつかられたの。
正面からぶつかってきたから、運転していた
お父さんと助手席に座っていたお母さんには
は、窓ガラスの破片が突き刺さって、
血が吹き出した。」
彼女は顔をしかめて涙目になる。
今も鮮明に覚えているのだろう。
「けどね、何よりも母が膝の上にいた香乃の事を必死に庇ってるのをみた。
だから香乃は助かった。でもね、悠香は…。」
香乃と悠香は双子の女の子らしい。
当時3歳だった彼女達は、花井さんと3歳差の
姉妹なのだそうだ。
事故で姉妹が…?
「悠香さんはどうなったの…?」
一筋の光る水滴が彼女の頬を伝った。
さっきと全然違う涙だった。
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