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「…でも、付き合うってどういうこと?」
「え、えっと…。」
妹がいなくなると、なんで僕らが付き合うんだ?
だが、それっきり彼女は黙り込んでしまった。
何か言えない理由でもあるのだろうか。
「…東雲…昌幸…。」
消え入りそうな声で彼女が言った言葉に
思わず耳を疑う。
「な、なんでそれを。」
僕の父親の名前だった。
思い出のない、
顔も覚えていない父の名前だった。
なんで彼女が知っているのだろう。
動揺が隠せない僕。
すると彼女は、一瞬笑った。
怒っているような、寂しそうな、でも嬉しそうな…。僕には全く感情が読み取れない、複雑な笑顔だった。
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