第2章

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そして彼女は僕に聞く。 「君さ、施設好きだった?」 「うん。まあ、安心できる場所だったよね。 よく本を書いていたよ。」 「本?」 「ああ。そういえば…。 少し長くなるけど僕の話を聞いてくれるかな?」 これも僕らが互いの事を知って、 協力し合えるようになるためだ。 * 僕は今も忘れられないんだ。 あの日父親に楽しい所に連れて行ってあげると言われて着いた所は施設だった。 当時の僕には施設がなんなのか全く分からなかったから、遊園地くらいの感覚だったんだ。 だけど、冷たい空気を放つ父親は、とても 遊園地に来た人の表情ではなかった。 だが僕は兄ちゃんと喜びながら つみきで遊んでいた。 どのくらい経っただろうか。 僕達はふと気付いたんだ。さっきまで側に座っていた父親がいなくなっていたことに。 僕は慌てて玄関にでた。 そして見た。 父親の大きな背中がどんどん離れていって、 小さくなっていくところを。 とにかく「父さん!」と叫んだがもう振り向いてはくれなかった。
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