第2章

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だが女の子はきょとんとして言った。 「これ、絵本じゃない…。」 そう、僕が持ってきたのは「絵のない絵本」 であり、僕が書いた本だった。 「むかーしむかしあるところに、おひめさまと おうじさまがいました。おひめさまのおなまえは、“こに”といいました。 こには、じぶんのだいじな ほうせきをなくしてしまって、ないていましたが、そこにおうじさまがやってきました。 おうじさまは、いえをぎゅーっとして、 「きみはえがおがにあうよ。」といってくれました。こにには、おうじさまの えがおが、ほうせきのようにみえました。 ふたりはそれからえがおでいっしょに くらしましたとさ。おしまい。」 本をパタンと閉じて、いえの方を見ると、 衝撃の一言を彼女は発した。 「ぎゅーってして?」 宝石みたいに光る、泣き腫らしたあとの瞳で。 僕はゆっくり近づき、 不器用に彼女を抱きしめた。 「もう泣かないでね。」 「うん。」 そして彼女はもう笑っていた。 無理して笑っているのではなく、 心の底からのキラキラと光る眩しい笑顔だった。 その次の日、彼女はもう友達を作っていたが、 あれから僕らが話すことはなく、いつの間にか 彼女は施設からいなくなっていた。
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