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「っていうのが、僕が本を本気で書くようになったきっかけなんだ。」
「…。」
彼女は何も答えずに僕をじっと見ていた。
「あ、えっと、君は有名人なの?」
「一応本は出しているよ。霜月翔っていう作者を聞いた事ないか?」
「あ、ある!それが君なのか〜!……あれ?」
「あぁ、あれも僕だよ。」
そう、僕がその女の子に読み聞かせをした
本が、世間でこっぴどい批判を浴びたんだ。
あの本で家族は壊れたんだ。
けど、それがあの本だったからこそ、僕は今も本を書いていられるんだ。
「そ、なんだ。」
少し気まずそうに彼女は言う。
「あ、気にしないでね。もう吹っ切れているし、もう心の傷は治っている。」
こくっと彼女は頷いた。
「あ、そっか。本を書いているから君はそんな授業でしか使わないような比喩表現を使って話してるわけね!」
「あぁ、たしかに。」
今まであまりそういう事は考えたことがなかった。たしかに一種の職業病に近いのかもしれないな。
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