第1章

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ふと目が覚めると、4時35分だった。 帰ってきてから1時間半も寝ていた事になる。 部屋はオレンジ色に照らされていて、 温かみを帯びた雰囲気になっていた。 今日の夜寝れるか不安になってくる。 するとリビングの方からテレビの音が 聞こえてきた。 兄ちゃんが帰ってきたのかもしれない。 * 兄ちゃんは僕より4歳年上で今年20歳になる。 ちなみにうちに、母親と父親はいない。 たしか僕が幼稚園生か小学校低学年くらいの時に離婚して、2人とも家を出ていったそうだ。 原因は、母親が小説家でスランプ気味に。 父親がIT関係の会社で社長になったこと。 衰弱する母親と浮かれる父親は互いの事を思いやる事がいつしかできなくなってしまった のだとにいちゃんが言っていた。 僕は母親と父親の顔を覚えていないし、 思い出なんか僕の人生の中で一欠片もない。 ただ、母親は東雲史子(しののめ ふみこ) 父親は東雲昌幸(しののめ まさゆき) だという事は知っている。 この2人は、確かに僕と兄ちゃんを 産んだ人であって、苗字と名前はこの2人から生まれたからついたものなのだろう。 きっと父方の苗字だ。
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