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「…ん?」
パチッと大きな目を開いて、僕の顔を見た彼女は、眠そうに、でも不思議そうな顔をした。
「…東雲君どうしたの?」
「なんで、なんで君が知っている!?」
彼女はよく分からないといった表情だ。
それもそうだろう。寝言だったんだから。
「まさゆきってなに?なんで知ってるんだよ!」
僕は明らかに取り乱していた。
バスの運転手さんが、ミラー越しにこちらを見ているのが分かる。
彼女は…彼女は、状況が呑み込めていないようだった。
「さっき寝言で君が言っていたんだ!思い出せば昨日だって言ってなかったか?まさゆきって、俺の父さんの事じゃないのか?」
その瞬間、サッと彼女の血の気が引くのが分かった。目を見開き、なんというか…。絶望が溢れたような顔をしていた。
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