第3章

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彼女は目線を下に落としながら、泣くのをこらえていた。 「うぅっ……。ごめん……。」 「……君が謝ることじゃない。」 「ねぇ、私は……私はどうしたらいいの…?」 それは……、それは…。 ぎゅっと胸が締め付けられる。 僕にできることは…もう、ないんだ。 だから……だから……。 「……さよなら。」 僕はバスの運転手さんにお願いして、 特別にその場で下ろしてもらった。 「行かないでよぉ〜……ううぅっ…。」 バスのドアが閉まる直前、彼女の心の声が聞こえた。もう君しかいないのに、と。 ごめん。心の中で僕も呟く。 もう振り返っても バスは走り去ってしまっていた。 もう一度…… 「さようなら。」 と、小さな声で呟いた。 それは、きっと誰にも届かないんだ。
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