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第4章
行き場をなくした僕。広い新宿。
いつもテレビで見ていた都会。
でも、そこに人はほとんどいなかった。
そして、じわりと滲む高いビルたち。
僕の足下のコンクリートに2滴の水滴が落ちて、
やがて蒸発して、消えた。
何を泣いているんだろう…。
傷つくのは、僕じゃない。花井さんだ。
僕は顔をあげて空を見上げる。
青く澄み渡る空。いつもブルー。
今日は、飴を通して見た時と同じ、
ぼんやりとした景色だった。
ふと飴を覗いた時の彼女の屈託ない笑顔を思い出した。
彼女の笑い声がリプレイされる。
バスに取り残された彼女は何を思っているだろうか。自分自身のことを責めていないだろうか…。彼女は悪くない。
僕の父親が悪いのだから。
…あれ……?
冷静になってからふと頭に思い浮かんだ疑問。
なんで僕が彼女と
関わってはいけないのだっけ。
「……僕の選択は正しかったのか…?」
当時、彼女の過去をぶち壊して逃げたのは、
僕の父親だ。
僕の父親は、花井さんの未来を変えてしまったんだ。花井さんから未来を奪ったんだ。
罪も償わずに今どこかでノコノコと生きているのかもしれない。
だったら……だったら、今僕のすべきことはなんだ?
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