第4章

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私の当時の記憶は曖昧だったから、 東雲翔という名前を聞いてもやっぱり君の顔は浮かばなかった。 そのまま話しを聞くとね、 君の過去もわかったの。 ご両親に捨てられたって。お兄さんと一緒だったんだよね。それで私は自分と少し状況が似てるなって思ったの。 まあ、多少の親近感、かな。 だからさらに君のことが気になった。 でもね、調べ始めて三日目。 君があの犯人の息子だって分かった。 でもそれを知った時の感情は、怒りでも 恨みでもなく、共感と哀れみだった。 それからはもうあっという間。 初めは君がどういう人か気になって学校では目で追ってた。 で、そしたら人目に触れないところで小説を書く君を見つけて、さりげなく黒板の板書を消す君を見つけて、美味しそうにご飯を食べる君を見つけて……。
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