第1章

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そんな事を思い出していたら、 テレビの音で意識が現実に戻った。 兄ちゃんに「おかえり」を言おうと思って リビングのドアを勢いよく開ける。 が、そこに兄ちゃんの姿はなかった。 テレビはついているのに。 もしかしたら部屋で寝ているのかもしれない。 リズミカルな音をたてながら 階段を勢いよく駆け上る。 ドアノブに手を掛け、 もう一度バシン!と音をたてて ドアを開ける。 「おかえり!!」 大きな声で言ったのに、 その声はドアを開けた音と共に 部屋に虚しく響いた。 トイレ、お風呂、ダイニングルール、和室…。 全ての部屋をチェックしたが、兄ちゃんは 見つからなかった。 どこに行ったのだろう。 そういえば、 さすがにバイトにしては帰ってくるのが 遅すぎる気がする。 何かあったのだろうか。 心配になり、一応メールを送っておく。 けれどどんなにスマホを片手に待っていても 結局返信は返ってこなかった。
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