第2話 失礼な男

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「デートどうだった?」  週明け、ロッカーで顔を合わせた沙織が尋ねてきた。    美帆はまたあの関西弁男を思い出してげんなりした。 「……うん、いい人だった」 「にしては微妙な顔ね」 「ちょっと色々あって」 「色々って?」  美帆は沙織に一連の出来事を説明した。思い出すとまたムカっ腹が立ってくる。 「ふうん、そんな人がいたんだ」 「すっごく失礼な人だった。せっかく気分よく喋ってたのに台無しよ」 「でもさでもさ、声かけてきたってことは、その人美帆に気があったんじゃない?」 「まさか。いきなりあんな失礼なこと言ってきた人が? ありえないよ。小学生の男の子じゃあるまいし」 「新手のナンパかも」  そんなわけがない。明らかに嫌味たっぷりだった。「男漁り」など普通の神経をした人間は言わない。  ────もしかしてあの人も私のことガツガツした女だと思ってた?   なんだか一気に自信を無くした。中村とのやりとりは続いているが、お互い特別気に入った感じではない。多分、またで終わるような気がする。  美帆は着替え終わるとミーティングのために一階の総合受付に向かった。いつものように清掃員に朝の挨拶をしたところで、ハッとした。  あの男性清掃員の顔が、なんだか先日見た男の顔に似ているように見えたのだ。あの時は全く気が付かなかったが、よく似ている。美帆は男の顔を凝視した。  まさか、あの時の男があの清掃員なのだろうか。グレーのキャップのせいでよく見えない。 「おはようございます」  男は爽やかな笑顔で挨拶を返した。やはり、よく似ていた。しかしあまりにも態度が違う。  ────そんなわけないよね。あの人スーツ着てたし、この人とは無関係に決まってる。  美帆はついでに男性の胸元にかけられている名札を見た。『滝川(たきがわ)』と書かれている。  滝川はすでに仕事を始めていた。  美帆も切り替えて仕事に集中することにした。だが、なんだかまだ滝川のことが気になった。いや、滝川に似たあの男が。だろうか。  一緒に食事した中村より、なぜあんな男の方が印象に残るのか不思議だった。
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