沈み込む花

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「いらっしゃいませ」  静かに開けたはずの扉に、彼はすぐ気がついた。入ってきたのが私だと分かると、張り付いたような営業スマイルを少しだけ深める。  学校の前にあるこの小さなカフェ・クレオメは、いつだって客が少なかった。古びた店内は薄暗く、静かなジャズが流れており、高校生には向かないのだろう。  だから私もずっと気になっていたが、入る勇気はなかった。  数ヶ月前に思い切って入ってみたのは、同じ高校の生徒が利用しているのを見かけたからだ。一度来てみれば、それ以降は抵抗がなくなっていった。  私はここが気に入っていた。
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