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「うまかったろ」
「うん、結構うまかった」
店を出て少し軽くなった財布をズボンの後ろポケットにねじ込みながらそう答えると友人は満足そうに笑った。
その後、二人で帰路につきながら「それにしてもお前本当に上品に飯食うようになったよなー、本当に女みたいだった」とニヤつきながら茶化してくる友人に「褒め言葉として受け取っとくよ」と僕は怪訝な顔をする。そして、「顔にしわができるからやめとけ」と笑う友人を尻目に道の角を曲がったところで複数の騒音が聞こえた。
どうやら近くで酔っ払いが喧嘩をしているらしい。
それを見て「ちょっと見に行ってみようぜ」と走り出す友人を追いかけて僕は野次馬に飛び込んだ。
そこでは予想通りに酔っ払い同士の大したことのない取っ組み合いが行われていた。かなり飲んでいるらしく動きに切れもくそもない。野次馬の中には熱心に応援している輩もいるけれどこんな生温い試合でよく満足できるものだ。
そうこうしているうちに警官が2人走ってきてあっという間に酔っ払い達をねじ伏せた。巡回の警官が最近は多いから騒動を聞きつけてきたのだろう。
さすがの身体能力だと感心しながら見ていると「そんなにお前が喧嘩ごとに興味示すの珍しいな、なんかあった?」が友人が僕の顔を覗き込んでくる。
一瞬この前の夜の警官さんの顔が脳裏をよぎりどきり、とする。「さぁ?僕だって男子だからそんなこともあるんじゃない?」と顔を背けすたすたと帰り道に向かって歩き出す僕を不思議そうに友人は見つめていた。
もし、あそこにいたのがあの夜の警官さんだったらもっと早く、もっと綺麗にねじ伏せていたんだろうな。
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