0人が本棚に入れています
本棚に追加
ある日いつもバイト帰りに立ち寄る公園でいつも通りベンチに座って月を眺めていた。
月を見ると不思議と安心出来る。
月が見守ってくれているような気がして。
ただ何故か満月の時は違った。
過去と何か関係があるのか満月を見ると心がザワザワして少し不安になった。
今日は満月だった。
満月を見続けていれば何か思い出すのか。
因みに今のところ成果が出たことがない。
過去といえばアキトが自分の本当の弟じゃないことは途中からなんとなく分かった。
ただ弟として自分の傍に居てくれるのは何故なのか、知ってしまったらいけない気がしてそのまま兄弟ごっこを続けている。
そして何より身寄りのない自分にはアキトの存在が安心できた。
今日はそろそろ帰ろうか。
ついでに今日の満月はすごく綺麗だからみんなに見せようかな〜なんて思いつきで写真を撮った。
前ならこんな些細なことで写真を撮ろうとは思わなかっただろう
1年のときはそれこそ記憶が無くなったばっかりで暁斗のいるケンコーにばっかり行っていた
2年になってからは自分にも余裕が出来たし、なにより沢山仲良くしてくれる人達が増えた
春輝を筆頭にみんなでお好み焼きを作ったり、勉強会したり、クラスは違うけどちーちゃんとは今年お祭りにも行った。来月は学校祭だし、このまま過去のこと忘れたままでもいいかもなんて思うようにもなってきていて自分でも驚いてる。そんなこと絶対に駄目だけど。
そんな風に最近のことを思い出しながらスマホの画面を開いたところで急に後ろから物凄い衝撃があった
気づいたら自分はベンチの前に倒れていて、続いて頭に激痛がはしった
「・・・ッ」
「・・・ッテェな」
振り返ると見覚えのある男3人組がいた
前にも呼び出してきた奴ら
確か俺の過去も知ってるようなことを言ってた・・・
あの時はぶん殴って吐かせようとしたけど、最後の最後に逃げられたんだよなぁ
まさか今更背後から襲われるとは思わなかった
しかも3対1・・・
こんなか弱い女子に男3人とは
情けない
しかも隙をついて攻撃してくるとか・・・ダサすぎ。
「男なら正々堂々正面から来いよ。」
頭がくらくらするけどなんとか立ち上がって正面から向き合った
「ナオヤ、お前まさか女になってるなんてなァ・・・
しかもあんなことしておいて全部綺麗さっぱり忘れてるとか。舐めてんのか??」
やっぱりこいつら昔の俺を知ってるらしい。
「お前ら俺の何を知ってる?」
「うるせぇ、とにかくお前を連れて来いって言われてるんだ。そのためにはぼこぼこにして来てもいいってな!なんも覚えてないならそのまま黙って殴らせろ
よ!!!」
今度は正面から殴りかかってきた
これはほんとに真っ向勝負しないと教えてくれないらしい。
殴り合い。久しぶりにぞくぞくする。
なんなんだこの高揚感。
前にもこんなことがあった・・・??
「避けるんじゃねぇ!!!!
それともそんな格好してるってことはそっちの意味で好きにヤラセてくれん!(ゴッ)
グァッ・・・!」
「うるせぇよ。さっさと教えろ。」
「お前・・・!!!」
後ろから怒声と共に殴りかかってくる気配
そういやあと2人居たんだった。
こいつらを殴って絶対に吐かせる。そう思って俺は拳を振り上げた。何故か少しワクワクしながら。
ーーーーーーーーー
ハァ・・ハァハァハァ
・・・ハハハッ ゲホッ
あの後3人とも30分くらいで片付けた。
まさかナイフを持ち出してくるとは、、やるじゃん。
完全に舐めてた。
脇腹が軽く刺されたのか出血してる。
でもそんなことどうでもいい。
最初の頭を殴られたとき
そして、人を殴ったときの衝撃と感覚からなのか、少しだけ記憶が戻った。
あの時、目の前でアキトが死んだこと
そして自分も死のうとしたこと
自分だけが助かったこと
でもまだ肝心ななところは思い出せない。
何でアキトがあの場面にいた?
そして今いるアキトは誰だ??
思い出したと思ったら分からないことだらけだ・・・
そして何故かやけに冷静な自分がいる
こいつらが来たってことはまだチームは残ってる。
アキトを殺したのはこいつらのチームのリーダー・・・・・・絶対に許さねぇ。
そして思い出せないこともこいつらのアジトに行ったらなんとなく思い出せる気がする。
こうなったら行くしかない。
夏休み・・・会う約束してた人もいたけど。
こんな状態では皆と顔合わせられないな。
アキトには連絡・・・と思ったが、心配させるし
何よりアキトの正体が分からない今連絡とるのは気が引けた
スマホを開いたらさっき撮影した満月の写真
まさかこんなことになるなんてこれを撮った数分前には思ってもみなかった。
この写真、どうしようか。
でも、もし、万が一戻って来れなかった時に、満月を見て俺の事思い出してくれないかな、なんて柄にもない事・・・・・・
いつから俺はこんなに弱くなったんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!